和解学の創成

  • 1872年東京 日本橋

  • 1933年東京 日本橋

  • 1946年東京 日本橋

  • 2017年東京 日本橋

  • 1872年8月〜10月北京 前門

  • 現在北京 前門

  • 1949年前後北京 前門

  • 1930年代北京 前門

  • 1895年台北 衡陽路

  • 1930年代台北 衡陽路

  • 1960年代台北 衡陽路

  • 現在台北 衡陽路

  • 1904年ソウル 南大門

  • 2006年ソウル 南大門

  • 1950年ソウル 南大門

  • 1940年代初ソウル 南大門

ジョージタウン大学の小野田奈津先生による「コミュニティを揺さぶる劇場芸術家の告白:ジレンマと葛藤を超えて私を動かすもの」講演が英語で行われました(2019年11月11日)。コミュニティーを一つにし、不正と不平等を追求しつつ、文化を超えた理解を広げる演劇の役割について議論が展開しました。

Date: November 11, 2019

Time: 16: 30-18: 00  Place: 14-960

Speaker: Natsu Onoda Power, Affiliation; Georgetown University

 

小野田先生はジョージタウン大学の数少ないアジア系の専任です。人の心と感情を倫理や規範を内包した芸術によって揺さぶり、人間の感情を変容させる効果を伴うような演劇が、ワシントンDCのジョージタウン大学や、近くの劇場を舞台にして、どのように展開されてきたのか、小野田先生ご自身の体験を交えて語っていただきました。小野田先生は、パフォーマンス学の学者であると同時に、自ら劇作家として創作活動にも関与されています。

Title:  Confessions of a Community-engaged Theater Artist: Dilemmas, Struggles, and What Keeps Me Going
Abstract: Since the 20th century, artists and activists have extensively used theater and performance as a catalyst for social change, and as a vehicle for community engagement. A performance event can powerfully bring a community together, address injustices and inequalities, give voices to the underrepresented, foster cross-cultural understanding, educate the audience, and more. At the same time, the practice of community-engaged performance is often fraught with ethical pitfalls and dilemmas. Using Dwight Conquergood’s essay “Performing as a Moral Act: Ethical Dimensions of the Ethnography of Performance” as a point of departure, and using my own experiences as case studies, this presentation explores the challenges of ethnography and community-based theater.

Natsu Onoda Power is a theater artist based in Washington DC.

「一人一人の人間は、内面に独自の物語を持っている」という前提のもとで、社会を変容させる手段でもあり、知識の結晶体でもある演劇が、いかなる意味で道徳的行為と言えるのかという点が、演ずるものと演じられるものとの距離感や演出者の立ち位置を中心に論じられました。後半は、アメリカのワシントンを舞台として、今現在展開されている演劇を例にして、どのような材料をいかに集め、いかなる演劇がいかなる人間たちによって演じられているのかが語られました。

現在の日本には、おそらく存在したない文化としての社会に根ざすパフォーマンス芸術の話を伺いながら、東アジアにおいてナショナルなアイデンティティを超えていくことの意味が、エスニックなアイデンティティをアメリカという社会の中で超えていくことと、どのように違い、似ているのかについて、考えさせられました。和解学の大きな命題は、主体自身の関係の変容を伴うような新しい関係の樹立です。その過程では、政府間の関係のみならず、トランスナショナルな市民のネットワークも、変容する部分を担う大きな役割があろうと思います。そこから生まれる新しい文化として、こうした舞台芸術が創作される日を一瞬、夢見ました。引き続き、小野田先生と連携しつつ、このテーマを探求し続けたいと思います。