1872年東京 日本橋
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1946年東京 日本橋
2017年東京 日本橋
1872年8月〜10月北京 前門
現在北京 前門
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1930年代台北 衡陽路
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1904年ソウル 南大門
2006年ソウル 南大門
1950年ソウル 南大門
1940年代初ソウル 南大門
文喜相(ムン・ヒサン)大韓民国国会議長の講演を公開させていただきます(最初にダイジェスト版、次に全文が続きます)。
<日本の国民とメディア、そして日本政府の恩を忘れない>
金大中(キム・デジュン)大統領は、いつも自分の生命と安全を守ろうと長年にわたって努力してくださった日本の国民とメディア、そして日本政府の恩を忘れないといつも言っておりました。
また、日本が韓国の民主主義の達成において、そして、IMF経済危機から脱するにおいても、大きな支援をしてくださったことに対し、いつも感謝しておりました。
<不本意ながらある外信の報道で日本の方々の心を傷つけてしまったことをよく存じ上げております。>
去る2月、不本意ながらある外信の報道で日本の方々の心を傷つけてしまったことをよく存じ上げております。そんな訳で、すでに日本の政治家や議会指導者の方々に申し訳ないという意思を表明しております。日本のマスコミにも報じられましたけれども、本日、日本の未来の希望でいらっしゃる大学生の皆さんの前で、もう一度、私の発言により、心が傷ついた方々に申し訳ないということをこの場をお借り致しまして改めてお詫び申し上げたいと思います。
<(現下の危機)その深刻さは危険水準です。迅速に解決策を作らなければならないということをもう一度強調いたしたいと存じます>
現下の韓日の葛藤がかつての困難とは違い、危ぶまれているのには、理由があります。両国政府間の関係にとどまらず、一般国民の感情にまで入り込んでいる状況であるからであります。その深刻さは危険水準です。迅速に解決策を作らなければならないということをもう一度強調いたしたいと存じます。
まさにこのような時こそ、韓国と日本両国の議会や政治家がクリエーティブな役割を果たさなければならないと思います。議会の役割とは、両国政府間でできることは積極的に支援し、政府間でできないことであれば、それに対するクリエーティブな解決策を模索することであると思います。
<韓国国内の立法による「新たな仕組み」と首脳会談の提唱>
もはや韓日関係を取り戻す「新たな仕組み」を作る立法的な努力は、議会指導者の責務であると思います。こうしたことから私は、韓国の立法的解決策を示したいと思います。韓国の国会にはすでに日帝による強制徴用被害者問題を解決するための様々な方策を盛り込んだ法案が何件か提出されています。私はこうした法律案を分析して取りまとめ、一つの案で提案したいと思います。
法律案に具体的に盛り込まれるべき内容は、第1に、強制徴用被害者問題や慰安婦被害者問題など韓日の間の葛藤を根本的かつ包括的に解決する内容でなければなりません。第2に、韓国大法院の判決を受け、すでに執行力が発生した被害者と、将来的に予想される同じ内容の判決で勝訴した被害者に「慰謝料」が支払われれば、日本企業の賠償責任が「代位返済」されたものとみなされ、賠償を受けた人に対しては民事訴訟法による「裁判上の和解」が成立したものと、みなされ、長い間続いた議論が終結する根拠が盛り込まれなければなりません。第3に、未来志向的な韓日関係に向けて韓日請求権協定などに関する全ての被害者の賠償問題を一定期限を定めて一概に解決する規定を盛り込む必要があります。
当然、関連の審議委員会も設置しなければなりません。財源の確保については、基金を設置するものの、両国の責任ある企業が賠償する1+1方式を原点から見直す方向が望ましいでしょう。基金の財源は、第1に、両国企業の寄付金でつくるが、責任ある企業だけでなく、その他の企業まで含め自主的に寄付する形であります。第2に、両国国民の民間募金です。第3に、現在残っている「和解・癒し財団」の残高60億ウォンを含めることであります。
最後に、こうした基金を運用する財団に対して、韓国政府が拠出できる根拠条項を作らなければなりません。このように被害当事国である韓国が先駆けて立法を行い、韓日両国が対立している懸案について包括的に協議を行い、譲歩できる名分を与え、和解と協力の糸口がつかめることを期待します。
<第2の金大中・小渕宣言、文在寅・安倍宣言を希望>
皆さん、外交とは、可能性のアートで、政治は、生き物だと言われています。文在寅大統領の選挙区は釜山です。安倍総理の選挙区は下関です。今も両地域を連絡船が行き来していますが、この船の上で行われる韓日首脳会談を想像してみましょう。南北、米朝首脳会談に匹敵するくらい全世界からの注目を浴びると思います。この首脳会談を通じ、まず第1に、国交正常化の決着を付けた韓日請求権協定と1998年に金大中大統領と小渕首相とが署名した「日韓共同宣言」を尊重し、第2に、日本のホワイトリストからの韓国排除と韓国のGSOMIA終了措置を元に戻し、第3に、両国の懸案問題(強制徴用工問題など)を立法によって根本的に解決する妥結が行われることを期待します。
<<以下・講演全文を掲げます>>
□第2の金大中(キム・デジュン)・小渕宣言、文在寅(ムン・ジェイン)・安倍宣言を期待します
「真の信頼、創意的解決策で未来志向的な韓日関係の修復」
こんにちは。大韓民国国会議長 文喜相(ムン・ヒサン)と申します。
親愛なる早稲田大学の学生のみなさん、先生方や教職員の皆様、本日お会いすることができ、非常に嬉しく存じます。そして、本日、この場に、関心を持って参加していただいた皆様に感謝の
意を表したいと存じます。本日、世界的な名門、ここ早稲田大学で皆さんにお会いすることができ、とっても嬉しく、また光栄に存じます。
本日特別講演の機会を与えてくださった早稲田大学国際和解学研究所の浅野豊美所長と高麗(コリョ)大学、平和と民主主義研究所のパク・ホンギュ所長をはじめとする関係者の皆さんにも感謝申し上げます。G20国会議長会議を機に日本を訪問する中で、最も期待していた時間でした。
学生の皆様!
ここ早稲田大学は日本有数の名門教育機関という名声にふさわしく、立派な人材を輩出しました。小渕恵三総理や森喜朗総理をはじめ、戦後7名の内閣総理大臣がこの学校を卒業されました。数多くの卒業生たちが日本社会の各分野で最高のリーダーとして成長されました。この学校出身でいらっしゃる村上春樹は、韓国の国民が最も愛する日本の小説家です。
何よりも、私には、ここ早稲田大学が特別に思える理由があります。1943年、早稲田大学に入学して野球チーム主将を務めた金永祚(キム・ヨンジョ)選手が私の岳父です。韓国に帰国してからは、大韓民国国家代表コーチや監督を歴任し、野球教本も執筆するほど生粋の野球人でした。残念ながら、もう、ずいぶん前にお若くして亡くなりましたが、生前は当然母校である早稲田の校歌を好んで歌っていたそうです。私の妻が何小節かを覚えていて、少しばかり歌うことができるくらいですが、「進取の精神、学の独立、永遠の理想、かがやくわれらが行手を見よや」という歌詞からも、うかがえますように早稲田大学の堂々とした学風と気性が感じられます。もう、ずいぶん前の岳父との思い出を再び思い起こすことができて、わたくしは、本日、皆さんとの出会いに、感慨深いものを感じます。
□ 韓日両国、宿命的な友人でありパートナー!
学生の皆さん!
日本にとって韓国は、そして韓国にとって日本は、どのような意味を持つ存在でしょうか。ご周知のとおり、 地政学的には、最も近くて近い国であります。歴史的には1500年以上の長くて深い交流が続いていた関係であります。文化的には、同じ語順であるウラル・アルタイ系の言語を使っており、仏教や儒教の文化も共通しています。何よりも韓日両国は、民主主義と市場経済という普遍的価値を世界で共にリードしてまいりました。とりわけ、安保においても、韓米同盟、日米同盟、韓日米協力の一軸として緊密に協力してまいりました。このように韓日両国は、韓半島と北東アジアの平和と繁栄のための重要なパートナーであり、仲間でもあります。
このような歴史的、文化的、政治的背景の中で、両国国民の相互交流は、非常に活発に行われています。年間、日本を訪問する韓国国民が8百万人であり、韓国を訪問する日本国民も3百万人に達しています。両国国民の人的交流は他国と比較にならないほど圧倒的に多いです。わたくしは、人間関係の延長線がまさに国際関係であると思います。韓日両国は、お互いに引っ越すことのできない、最も近く、長年の隣人であると同時に宿命的なパートナーであると言えるでしょう。
□韓日関係、このまま放置するのは無責任
学生の皆さん!
残念ながら最近、韓日関係に大きな試練が訪れました。今回の日本訪問を控えて、ずっと重い気持ちでした。1965年の国交正常化以来、時折、大変な時期を経ながらも、両国間の交流と協力は持続的に拡大・発展してまいりました。しかし、現在の両国関係は、まるで出口が見つからない迷路に閉じ込められたような気がいたします。
無信不立(信無くば立たず)という故事成語にもありますように、外交関係においても、やはり信頼は、アルファでありオメガであります。現在は、信頼の危機と言えます。
これ以上、両国関係を放置しておいてはいけません。朝日新聞も「韓日関係をこのまま放置するのは、未来に対する無責任」と指摘しました。これに対し、わたくしは、非常に共感を覚えており、韓国の政治家としての大きな責任も感じております。
わたくしは、今の日韓の状況を見て、二つのことを思い浮かべました。第一に、1963年のドイツとフランスが締結したエリゼ条約であります。第二に、1998年に、日韓の指導者が両手を取り合って出された日韓共同宣言であります。
□ ドイツとフランスの和解、指導者たちの未来志向的リーダーシップが大きく作用
歴史的に数多くの戦争を経験し、数百年間にわたり、ライバル関係にあったドイツとフランスは1963年1月、エリゼ条約を締結しました。この条約には、これまでの敵対関係を清算し、共に協力する新しい時代を開くという内容が盛り込まれています。外交と国防、教育と文化など全ての分野にわたり、協力を強化するために国家指導者や高官が定期的な話し合いをする枠組みを作ることに合意しました。
私たちがドイツとフランスの事例に注目しなければならない理由は、その背景に、ドイツの過去に対する真摯な謝罪とフランスの和解と許しがあったからであります。信頼に基づいた両国の和解と協力は、ついに欧州連合を誕生させる土台につながりました。特に、フランスのシャルル・ド・ゴール大統領とドイツのコンラート・アデナウアー首相が結んだエリゼ条約の精神は、その後もミッテラン大統領とヘルムート・コール首相に継承され、さらに強固なものに定着しました。まさにこれは、両国の政治指導者の未来志向的なリーダーシップが非常に重要な役割を果たした賜物でもあるのです。
今、両国は、欧州連合のリーディングステート(先導する国)として、ヨーロッパでも高いステータスを持っており、日韓両国にとって、示唆に富むものが多いと思われます。
□金大中(キム・デジュン)・小渕の日韓共同宣言、日韓両国の過去・現在・未来を見通した両国指導者の素晴らしい洞察力
皆さん、二つ目については、皆さんも十分ご存じでいらっしゃると思います。1998年10月、韓国の金大中(キム・デジュン)大統領と日本の小渕首相が成し遂げた「21世紀に向けた新たな日韓パートナーシップ」であります。まさに韓日関係のルネサンス時代を切り開いたと今なお高く評価されています。この宣言の構想を練った金大中(キム・デジュン)大統領は、先ほど申し上げたドイツやフランスの和解からインスピレーションを受けたと話したことがあります。
金大中(キム・デジュン)大統領は、いつもこの宣言が実現するにおいて、当時の小渕首相が一番の功労者だったと高く評価していました。また、小渕首相は、日本の歴代首相が躊躇し、ためらっていた韓国に対する過去の歴史問題について「痛切な反省と謝罪の意」を示す勇気と決断を見せました。これは実に画期的な出来事であったとキム大統領は後に振り返ります。
私は、金大中(キム・デジュン)大統領・小渕総理の間に形成された信頼こそ、日韓共同宣言を誕生させた土台になったのだと思います。心からの信頼を土台にして誕生した宣言なので、後続措置も迅速に行われました。
人的・物的交流協力の促進は然ることながら、両国の国防関係者の交流や情報交換を通じた安保協力の強化、対北朝鮮政策について緊密な政策協力、経済協力の強化、韓国における日本大衆文化開放、日本入国ビザの簡素化、過去史共同研究など、公式・非公式な交流が大幅に拡大されました。この「金大中(キム・デジュン)・小渕共同宣言」後に、韓日関係のパラダイムは根本的な転換点を迎え、新たな地平を切り開いたと確信いたします。
皆さん、何よりも大事なことは「21世紀に向けた新たな日韓パートナーシップ」の根底を貫く精神であります。「過去を直視しながら未来を目指そう」ここで「過去を直視すること」は、歴史的事実をありのままに認識することであり、未来を目指すということは、ありのままに認識された事実から教訓を見出し、より良い未来を共に切り開いていこうという意味であります。
これは、正に韓日両国の過去、現在、未来を見抜いた二人の指導者の驚くべき洞察力にほかなりません。現在を生きる私たちが過去に足を引っ張られ、未来へ進むことができなければ何と愚かなことでしょうか。しかし、未来を口実に過去を覆い隠そうとすれば、さらに愚かなことになると思います。
□金大中(キム・デジュン)大統領と文喜相(ムン・ヒサン)、
日本に格別で深い愛情を持つ!
尊敬する皆さん!
韓日関係の新たな地平を切り開いた金大中(キム・デジュン)大統領において、日本は特別な国でした。46年前、ここ東京で拉致され、死の危機を乗り越えた事件がありました。これ以外にも6年の監獄生活や10年以上の自宅軟禁、五回にもわたり、白刃の下をくぐって生き抜きました。そして、独裁政権のあらゆる弾圧やひどい拷問にも耐えぬいて、ついに彼は、大韓民国に民主主義の花を咲かせました。全世界からその功績を認められ、ノーベル平和賞を受賞するにいたります。
金大中(キム・デジュン)大統領は、いつも自分の生命と安全を守ろうと長年にわたって努力してくださった日本の国民とメディア、そして日本政府の恩を忘れないといつも言っておりました。
また、日本が韓国の民主主義の達成において、そして、IMF経済危機から脱するにおいても、大きな支援をしてくださったことに対し、いつも感謝しておりました。
皆さん、私は大韓民国の国会議長を務めるこれまで、40年余りの政治人生を歩んでまいりました。
その長い政治人生において金大中(キム・デジュン)大統領は私の政治信念の中核だと言えます。私の政治の師匠であると同時に、父でもありましたので、私も日本と日本国民に対して格別で深い愛情を持つのは当然のことであります。
私は、青年時代からJC活動を通じて日本の同年代の方々と交流を深めてまいりました。政界に入った後も誰より日本との友好のために努めた知日派として活躍してきました。両国議員の最大組織である韓日・韓日議員連盟の韓国側会長も長年務め、日本の議員の先生方と多方面にわたり、親睦を深めてまいりました。だからこそ、日本に対する理解も十分あると自負しております。
去る2月、不本意ながらある外信の報道で日本の方々の心を傷つけてしまったことをよく存じ上げております。そんな訳で、すでに日本の政治家や議会指導者の方々に申し訳ないという意思を表明しております。日本のマスコミにも報じられましたけれども、本日、日本の未来の希望でいらっしゃる大学生の皆さんの前で、もう一度、私の発言により、心が傷ついた方々に申し訳ないということをこの場をお借り致しまして改めてお詫び申し上げたいと思います。
□韓日首相会談、もつれた糸を解くようなこと!
尊敬する皆さん!
去る10月24日、日本の安倍総理と韓国の李洛淵(イ・ナギョン)首相が会談しました。李洛淵首相は、文在寅(ムン・ジェイン)大統領の親書を安倍首相にお伝えしました。新しい令和時代の幕開けを祝うと共に、両国関係の発展を望み、台風の被害に遭われた日本国民の皆様にお見舞いを申し上げる内容となっております。わたくしも、衆参両院の議長にお見舞いを申し上げる書簡をお送りいたしました。
今回の会談において、両国とも韓日両国は重要な隣国であり、現在のような困難な状況をこのまま放置してはいけないとの認識を示しました。さらに、北朝鮮の核問題においても、韓日両国と韓日米の協力が大事であるとの共通認識を形成しました。とりわけ、政府レベルのみならず、青少年をはじめとする民間交流を通じて意思疎通を続けていこうということで認識を共にしました。非常に有意義な会談だったと存じます。
もちろん、今回の会談を通じて現状を打開する目に見える成果が出るとは思いませんが、私は、この会談が現在の韓日関係において、もつれた糸を解きほぐすような、そういう役割をしてくれる発端になれると期待しております。
□韓国政府と議会、国家間の約束破っておらず、むしろ尊重
現在の韓日の葛藤は、韓国の大法院(最高裁判所)の強制徴用工判決に対する両国間の立場の違いから始まりました。その後「ホワイト国」リストから韓国除外、さらに韓国のGSOMIA終了宣言など、予期せぬ事態が相次いで起こりました。
日本政府は、韓国政府が国家間の約束を守ってないと主張しています。しかし、韓国政府は1965年の日韓請求権協定を否定したり、破棄を宣言したことはなく、むしろこれを尊重するという立場を明らかにしてまいりました。とはいえ、韓国の最高裁判所は、不法な植民地下での不法行為による慰謝料の賠償は国家間の請求権協定の適用対象には含まれないとの判決を下しました。つまり、政府間の約束とは別に、個人の請求権まで放棄させることはできないという解釈です。
韓国政府は、このような大法院(最高裁判所)の判決を三権分立の原則に基づいて尊重せざるを得ない立場にあります。
日本政府もこれまで「サンフランシスコ条約」に対して外交保護権を放棄するものであって、個人請求権の放棄ではないという点を明らかにされてきたと伺っております。
□ 本質は慰安婦被害者の心のわだかまりを解消すること
慰安婦問題も同様です。韓国政府は「2015年の韓日慰安婦合意」の破棄を宣言したことも、再交渉を求めたこともございません。しかし、被害当事者が全く同意できない合意は、そもそも現実的ではなかったと思います。慰安婦問題解決の本質は、被害当事者の尊厳と名誉を取り戻し、心の傷を癒すことにあります。特に、亡くなるまで心の中に溜まっているはずのわだかまりと恨(ハン)を解消することがとても大事です。今年の初め頃にこの世を去った慰安婦被害者の故
金福童(キム・ボクドン)さんは、亡くなる瞬間まで「お金のことではない。私たちは100億でなく1000億をもらっても歴史を変えることはできない」と叫びました。彼女が望んでいたのは、心からの謝罪の一言でした。
皆さん、早稲田大学を卒業した河野洋平元衆院議長は「日韓関係において最も重要なことは人間と人間の理解であり、日本人と韓国人が相手を心から理解し、信頼できるようにならなければいけない。相手の立場を思い、尊重しなければならない。」と言い、相手の身になって考えるのを強調されました。慰安婦被害者問題や強制徴用被害者問題は、日本と韓国が共有・追求してきた人類の普遍的な価値である人権の問題です。両国の指導者が額を集めて、知恵を出し、被害者のわだかまりを解消していけることを期待します。
□ 半世紀の間、続けてきた両国の議会交流を通じて解決策を模索する時
尊敬する皆様、
先ほど申し上げた懸案に対し、韓日両国政府はそれぞれの立場を堅持しています。そのため妥協が容易でない状況であるのもよく承知しております。とはいえ、この状況をこのまま放置すると両国国民には大きな傷と被害を与えてしまうことになるでしょう。現下の韓日の葛藤がかつての困難とは違い、危ぶまれているのには、理由があります。両国政府間の関係にとどまらず、一般国民の感情にまで入り込んでいる状況であるからであります。その深刻さは危険水準です。迅速に解決策を作らなければならないということをもう一度強調いたしたいと存じます。
まさにこのような時こそ、韓国と日本両国の議会や政治家がクリエーティブな役割を果たさなければならないと思います。議会の役割とは、両国政府間でできることは積極的に支援し、政府間でできないことであれば、それに対するクリエーティブな解決策を模索することであると思います。
戦後の韓日議会間の交流は、1972年の韓日国会議員間の懇談会から始まり、半世紀にわたる歴史を持っています。この間、韓日の葛藤を解決する非公式の外交チャンネルとして重要な役割を果たしてきました。私も、韓日関係の解決策を両国の議会が模索・支援しなければならないという使命感を持って、公式・非公式に日本の政治家と色々と話し合いを行ってまいりました。韓日の葛藤を早期に妥結しなければならないということにみんな共感を覚えています。
□ 「新たな仕組み」づくりに向けた立法的な努力は議会の責務
強制徴用問題について、日本政府は韓国大法院の判決を受け入れられないとし、日本企業は慰謝料の支払いを回避しています。というわけで、すべての強制徴用被害者が実質的な損害賠償を受けるのは、きびしい状況にあります。韓国大法院の判決による強制執行の時限も迫ってきています。しかし、韓国では現行法上、大領領や国会に司法府の判決に基づいた強制執行を中断させたり、延期させる権限がありません。これまで両国政府間で出されていた提案は接点を見出せず、韓日関係は、まるで平行して走る列車のような格好です。
もはや韓日関係を取り戻す「新たな仕組み」を作る立法的な努力は、議会指導者の責務であると思います。こうしたことから私は、韓国の立法的解決策を示したいと思います。韓国の国会にはすでに日帝による強制徴用被害者問題を解決するための様々な方策を盛り込んだ法案が何件か提出されています。私はこうした法律案を分析して取りまとめ、一つの案で提案したいと思います。
□ 強制徴用被害者などについて韓国の国会が先駆けて立法する
私が提案する法律案は、韓国国民の被害や心の痛みを韓国が先駆けて癒すという大前提から始めました。かつて苦痛を強いられた我が国民を国が癒さなければならない時期に至り、もはや大韓民国の国力も十分それに相応しくなったと思います。ちょうど、今年は、上海臨時政府樹立100周年になる節目の年でもあります。
法律案に具体的に盛り込まれるべき内容は、第1に、強制徴用被害者問題や慰安婦被害者問題など韓日の間の葛藤を根本的かつ包括的に解決する内容でなければなりません。第2に、韓国大法院の判決を受け、すでに執行力が発生した被害者と、将来的に予想される同じ内容の判決で勝訴した被害者に「慰謝料」が支払われれば、日本企業の賠償責任が「代位返済」されたものとみなされ、賠償を受けた人に対しては民事訴訟法による「裁判上の和解」が成立したものと、みなされ、長い間続いた議論が終結する根拠が盛り込まれなければなりません。第3に、未来志向的な韓日関係に向けて韓日請求権協定などに関する全ての被害者の賠償問題を一定期限を定めて一概に解決する規定を盛り込む必要があります。
当然、関連の審議委員会も設置しなければなりません。財源の確保については、基金を設置するものの、両国の責任ある企業が賠償する1+1方式を原点から見直す方向が望ましいでしょう。基金の財源は、第1に、両国企業の寄付金でつくるが、責任ある企業だけでなく、その他の企業まで含め自主的に寄付する形であります。第2に、両国国民の民間募金です。第3に、現在残っている「和解・癒し財団」の残高60億ウォンを含めることであります。
最後に、こうした基金を運用する財団に対して、韓国政府が拠出できる根拠条項を作らなければなりません。このように被害当事国である韓国が先駆けて立法を行い、韓日両国が対立している懸案について包括的に協議を行い、譲歩できる名分を与え、和解と協力の糸口がつかめることを期待します。
両国政府は、今すぐこの提案に対する立場を示すことは難しいかも知れません。いずれにせよ国民の代議機関である両国の議会が緊密に協議し、細かく議論して進めていかなければなりません。日本側の積極的な応えや参加も期待しております。勿論、両国国民の基準に及ばず、みんなから非難されるかも知れないこともよく分かっています。しかし、誰かは提案し、話すべきです。これもやはり私の責務であると考えます。両国国民の理解と支持が求められていると思われます。
□ 東京五輪の成功祈願、韓日中での2年おきに五輪が開催される意味は大きい
尊敬する皆様!
北の核問題に対する北東アジアの国際情勢が容易ではない状況にあります。ここ2年間で南北間で4回の首脳会談がありました。米朝間では2回、中朝間では5回、露朝間では1回など、北東アジア域内諸国においては、首脳会談が頻繁に行われました。最近、こうしたトップダウン方式の外交が日常化しています。
しかし、最も立場が似ている(like-minded country)国同士である韓国と日本で首脳会談がほとんど行われないのは、非常に残念でなりません。韓日両国は、外交安保レベルで互いに切っても切れない関係です。特に、北東アジアの安定と繁栄、韓半島の平和プロセスを追求する上で、日本が堅持する非核・平和原則は、いくら強調してもしきれません。
さらに、2020年東京五輪があと、1年も残っていません。アジアの韓日中で2年おきに五輪が開催されるのは、前例のないことであり、大きな意味合いがあると思われます。北東アジア地域の平和と安定はもちろん、世界の平和を主導する契機につなげるべきであります。
そのためにも東京五輪が必ず成功するよう祈り、そのためにも、韓日両国の協力が重要であると考えます。
□ 第2の金大中・小渕宣言、文在寅・安倍宣言を希望
皆さん、外交とは、可能性のアートで、政治は、生き物だと言われています。文在寅大統領の選挙区は釜山です。安倍総理の選挙区は下関です。今も両地域を連絡船が行き来していますが、この船の上で行われる韓日首脳会談を想像してみましょう。南北、米朝首脳会談に匹敵するくらい全世界からの注目を浴びると思います。この首脳会談を通じ、まず第1に、国交正常化の決着を付けた韓日請求権協定と1998年に金大中大統領と小渕首相とが署名した「日韓共同宣言」を尊重し、第2に、日本のホワイトリストからの韓国排除と韓国のGSOMIA終了措置を元に戻し、第3に、両国の懸案問題(強制徴用工問題など)を立法によって根本的に解決する妥結が行われることを期待します。
韓日首脳が近いうちに会って「21世紀の新しい韓日パートナシップ宣言」に勝る第2の金大中・小渕宣言、「文在寅・安倍宣言」が出されることを希望します。
□ 調和と尊重の気持ちで共生共栄の新時代へ進もう!
早稲田大学の学生の皆様!
9月に開催されたU-18ベースボールワールドカップの韓日戦でのある場面が世界の人々に小さな感動を与えました。9回裏、日本の投手が投げたボールが韓国選手の頭部、ヘルメットに当りました。下手すると感情が爆発しかねない状況だったにもかかわらず、若い二人は、帽子を取って謝罪の一礼をすると、ヘルメットを脱いで頭を下げて応えました。世界野球ソフトボール連盟は「尊重(Respect)」と題してその動画を掲載しました。韓日両国が進むべき方向を示したとの評判がたくさんありました。また、昨年の平昌冬季五輪スピードスケートで李相花選手と小平選手が見せた友情は両国国民に心穏やかな感動を与えてくれました。このような例から一昔前の世代、
特に両国の政治指導者は今、いったい何をしているのかという恥ずかしい思いがいたしました。しかし、その一方で「それにもかかわらず、韓日両国の未来は明るい」という希望に満ちた思いも抱いています。
最後に、日本の令和時代の開幕を改めて心よりお祝い申し上げます。「幸先の良い、平和な調和」を意味すると伺っておりますが、わたくしの心に大きく響きます。人間関係・コミュニティー・国家・国際関係の中で「調和」という言葉ほど大事な言葉があるのでしょうか。
皆さん、韓日両国がこの「調和」と「尊重」の気持ちで共存共栄の新しい時代に向けて共に進んでいくことを期待します。
ご清聴ありがとうございました。